「心に残るロータリアンの言葉」

【第39回】

(森三郎氏の講演会には何度か出席し、その都度心を打たれるお話を聴きました。)      

                                  

中井 義尚会員

「人材の森ロータリー」                   
 以前から私は森林浴に興味を持っておりますが、森の木はフィトンチットという芽香物質を発散しています。一本一本の木ではそれが風に吹きとばされてしまうのですけれども、森になるとさわやかな空気になります。寿司屋に行くとネタの入ったケースの下に杉の葉が敷いてありますが、あれは杉の葉の殺菌力を利用しているのだそうです。心理的にも生理的にも、森に入ると人間はとてもさわやかになるのはそのためです。           
 R.C.とは、ロータリアン銘々が森の木々と同じように、それぞれの経歴、思想、個性に応じた香しい雰囲気を放ち、その中に身をひたすことで森林浴と同じく心の健康、場合によれば体の健康までそこから得ることが出来る、そういう組織なのではないかと思います。ゆえにロータリーは人材の森、ロータリーライフは森林浴であると唱えておるわけです。              
 私が、人材の森を思いついたのは直感的なものでしたが、振り返って考えれば、その時私の胸には「初心」ということがあったのだと思います。初心というものは、誰が何と言おうと美しいものでございます。寄居R.C. の昨年度の会長は、創立以来二十五年間無欠席でした。彼と雑談をしていたとき、初めのころ出席率向上のためにどれほど苦労したかをあれこれ思い出し、同じ苦労をなめた仲間と次第に友情の絆を強めていった経過を語り合いましたが、それを語る彼の顔がドキッとするほど美しかったのです。二十五年前の初心の風が吹いていたからです。人間にとって初心ほど美しいものはないと思うのです。仕事をしようという声、例会に出ようという声、たまには家族サービスをしてよという奥さんの声、さまざまな声をより合わせて人生を編む、ここに妙味がある。そう考えるとロータリーのクラブライフは人としての器量を養うまたとない場面である、というふうに考えられるのであります。       

            森 三郎「私のロータリー」(1991)から。第2570地区PG(寄居R.C.)