川植康史副会長
こんにちは、今日は、木戸会長の代わりに私が会長の時間を務めさせて頂きます。
まず、先日上田会員から報告していただいたウクライナからの避難民のエミリアちゃんも連れての京都の浴衣観光の報告の続きをさせていただきます。当日撮絵した写真は、CDRで、ウクライナにいるエミリアさんのお父様に送られ日本で娘は、安全に生活しているとの報告ができたとのことでした。彼女の家族のささやかな癒しになれたらと思っております。
あと、みずほ証券のチーフエコノミストの方のウクライナ戦争に関する記事がありますので、紹介させて頂きます。
ウクライナ戦争の今後に関するシナリオには、どのようなものがあるだろうか──。
今後の展開として考えられるものを整理すると、以下のようになる。
1)メインシナリオ このまま戦争状態が長期化する。戦況は一進一退、もしくは戦線がこう着。
2)サブシナリオ 双方でえん戦気分が広がり、折り合いがつきにくい領土問題などはいったん棚上げにして、ある程度までウクライナに有利な条件で停戦する(ただし和平協定の締結は展望できず)。
3)リスクシナリオA 戦況が一段と不利になったロシアが戦術核兵器をウクライナで使用して局面打開を図る。西側で核を保有する3カ国のうち、フランスは核兵器によるロシアへの反撃を否定する発言を行ったが、米英の対応は未知数。NATOや欧州連合(EU)の高官から関連する発言がいくつか出てきている。仮に第3次世界大戦がぼっ発し、それが核戦争にまで至る場合、世界経済は極度に悪化し、金融市場は機能停止に陥るとみられる。
4)リスクシナリオB 軍によるクーデターなど何らかの理由からプーチン政権が崩壊し、ロシアのハト派的な新政権とウクライナとの間で停戦協議が妥結。和平協定成立の展望も開ける。
5)リスクシナリオC 軍によるクーデターなど何らかの理由からプーチン政権が崩壊した後、ウクライナ問題でより強硬姿勢をとる政権が誕生し、戦術核兵器をウクライナで使用して局面打開を図る(それ以降に想定される展開はリスクシナリオAと同じ)。
<相互確証破壊は有効か>
米ソ冷戦時代に言われた概念に「相互確証破壊(MAD)」があるわかりやすく言えば、一方の陣営が核兵器で攻撃すると、もう一方が破壊を免れた核兵器で確実に反撃してくることがお互いわかっている。だから、抑止効果が働いて核戦争は起こらないというロジックである。
今回の局面で先行きのシナリオライティングを難しくしているのは、ウクライナはNATOの加盟国ではない(NATOの集団安全保障の対象外)ことである。ロシアがウクライナで核兵器を用いる場合でも、それはNATOの域外で起こった出来事であり、原則的には核兵器でNATOがロシアに反撃する必要はない。核兵器にせよ通常兵器にせよ、NATOがロシアを攻撃すれば、それは第3次世界大戦を引き起こすことを意味する。
その一方で、専制主義陣営に属するロシアの武力攻撃という暴虐から民主主義の国であるウクライナを守るという意味で、米欧などによる武器を含むウクライナ支援は、政治的にきわめて重要でシンボリックな意味合いを有している。したがって、ウクライナが核攻撃を受ける場合にそれを座視することは、基本的に許されないと言える。
そうした難しい事情があることから、NATO高官の発言は一定のあいまいさを帯びたものになっている。
匿名のNATO高官は10月12日、ロシアが核兵器を使用すれば「ほぼ確実に多くの同盟国のほか、潜在的にはNATO自体の物理的な対応が引き起こされる」と警告。ロシアは「過去に例のない結果」に直面するとした。
ストルテンベルグNATO事務総長は翌13日の記者会見で「プーチン氏の核のレトリックは危険で無謀だ。ロシアがウクライナに対して何らかの核兵器を使用すれば、深刻な結果を招く」「こうした事態に対するNATOの具体的な対応については述べないが、極めて重要な一線を越えたことになり、紛争の本質が根本的に変わる」「使用されるのが小規模な核兵器だったとしても、ウクライナ戦争の本質を変える極めて重大な動きになる」といったせりふで、ロシアに対し強く警告した。
ただし、NATOの核抑止力の基本的な目的は平和を維持し、同盟国に対する強制を防ぐことだと指摘した同氏は、NATOが核兵器を使用せざるを得なくなるような状況は「極めてまれ」だとの見方も示した。
よほどのことがない限り、NATOとしては核兵器を使いたくないという姿勢がにじみ出ている。ロシアに対抗して核兵器使用に踏み切ってしまうと、へたをすれば世界の多くの地域の破滅につながりかねないからだろう。
この間、EUのボレル外交安全保障上級代表(外相)は13日、ロシアがウクライナに核兵器を使用すれば、核兵器による対応ではない(通常兵器による対応を指すとみられる)ものの、ロシア軍を壊滅させるような軍事面での強力な対応を米欧はとることになるだろうと述べて、ロシアをけん制した。
「NATOは核兵器による反撃を行わない」とプーチン大統領が確信すれば、戦況が極めて不利な局面でロシアがウクライナに戦術核兵器を使用する誘因は大きくなる。
しかし、仮に使用してしまうと、おそらく通常兵器でNATOがロシアに大規模な攻撃を行うため、第3次世界大戦になる。
NATOから大規模な攻撃を受けたロシアは窮地に追い込まれ、プーチン大統領は核兵器によるNATOへの反撃をおそらく実行に移すだろう。
すると、結局は地球規模の核戦争になってしまい、われわれは為替などマーケットの動向を予想しているどころではなくなる。まず、自分が生き残ることが最優先課題になるからである。