山本新一郎 会長
「実名報道」の扱い
以前にも何度か触れていますが、インターネットの急速な普及によって、現在の社会は情報処理の方法に苦慮しているようです。なかでも、「個人情報をどのように扱っていけばいいのか?」という問題については、いささか混乱しているような印象も受けます。
そこで今回は、最近のニュースの中であった犯罪被害者の「実名報道」の扱い、という問題に触れてみます。
1つは京都アニメーション事件で亡くなった方については、当初被害者35名全員が実名で報道されたそうですが、すぐにメディアの判断で匿名になりさらに遺族の方の要望・了承によって一部の方の実名があらためて公表されたそうです。また、2016年に発生した障害者施設「やまゆり園」の殺傷事件の第2回公判が今年1月に開かれましたが、この事件の犠牲者19名のうち唯一1名の遺族の方の希望で名前が公表されました。2016年にいじめによって自殺した中学生の遺族が実名の公表を行いましたが、これには写真コンテストで市の賞を受けていた当人が、自殺してしまったことを理由に賞を取り消されたという経緯があり、その無念さから遺族が本人の意思を尊重したいということで公表したようです。昨年12月20日にジャーナリストの伊藤詩織さんが性暴力を受けたとして戦っていた裁判に勝訴したニュースが流れました。このようなニュースは本人に対する社会的影響を考えて匿名で行うのが一般的ですが、今回の場合本人の強い意志で敢えて実名公表を行って戦ったそうです。
インターネットを通じて莫大な量と速度で拡散されるわけですから、実名報道によって当然被害者に対して様々なリスクが想定されることから、匿名にされることが多いわけですが、遺族側の希望で上記の葛西まりさんや美帆さんの例のように実名の公表に至るケースも少なくありません。ジャーナリストの伊藤詩織さんは実名公表の意義を強く訴えている1人です。
この問題はすぐには解決できませんが、今後の方向性を見ていくことは重要かもしれません。