山本新一郎 会長
空飛ぶクルマの今
空飛ぶクルマが実用化への階段を昇りはじめています。
2018年12月20日、経済産業省は、国土交通省と合同で、「“空飛ぶクルマ”の実現に向けたロードマップ」をとりまとめ、公開しました。これによれば、2019年の試験飛行と実証実験の開始、2023年の事業開始、2030年以降の実用化拡大が目標とされています。
<空飛ぶクルマとは> 現在開発されている「空飛ぶクルマ」には、様々なタイプのものがありますが、概ね2つに大別されます。ひとつは、翼を持った自動車で、地上走行と空中飛行の両方ができるもの、もうひとつは、乗車のできる大型のドローンで、地上走行のできないものです。
<実現に向けた課題> 空飛ぶクルマの実現に向けては、技術、インフラの整備、法規制、社会受容性、資金、事業化などの面で越えなければならないハードルがいくつも存在します。
- 技術面では、高度な安全性と信頼性の確保が要求されます。車体のサイズで航空機とは雲泥の差があるとは言え、空飛ぶクルマは頭上を飛行するものであるため、万が一にでも墜落した場合、墜落場所によっては大惨事を引き起こしかねません。したがって、これを回避するための機能を備えることが機体には求められます。
- インフラの整備の面では、航空機とは別に専用の航空管制システムと数多くの発着場、動力源を供給するための充電ステーションの設置が求められます。
- 法規制の面では、現行の航空法では、機体に航空機やヘリコプターと同水準の規制がかけられることが推察され、これには最低安全高度の義務付けなど、運用上足枷となる規制もあるため、これらを考慮に入れた法整備が必要となってきます。
- 社会受容性の面では、安全性を標榜することはもちろん、騒音対策も求められます。運航ルートとして運河や河川等の上空を選択することや、都市での運航時における発着場をビルの屋上にすることなどです。
- 資金面では、機体の開発には莫大な費用がかかるため、事業者への投資を促すための公的支援体制の整備等が重要となってきます。
- さらに事業化の面で必要不可欠なものが、サービス提供事業者の存在です。国外では、既に米Uberを筆頭にいくつかの事業者が「空飛ぶタクシー」構想を掲げ、事業化への準備を着々と進めていますが、日本国内では、トヨタ、富士通、NEC、パナソニックなどが支援するCARTIVATOR(SkyDrive)など機体の開発を行っている事業者は存在しますが、サービスの提供を構想に掲げる事業者は少ないようです。
- 資料 https://www.icr.co.jp/newsletter/wtr362-20190614-narada.html