山本新一郎会長
“入浴中の溺死”原因は?
冬場になると例年のことですが、“入浴中の溺死”の件数が増え注意が喚起されます。その約8割は65歳以上の高齢者で、特に75歳以上の人が圧倒的に多いそうです。しかもこの死亡事故の割合は我が国が圧倒的に多いという報告があります。このリスクの原因は、一般に外気温度の急激な変動に体が対応できないことによる「ヒートショック」と呼ばれる現象とされ、主な原因疾患は心筋梗塞や脳梗塞、脳出血などが知られています。さらに、入浴中はのぼせや失神、不整脈などを起こしやすく、そのことも急死の原因につながっていると考えられてきました。このことは、入浴中ばかりではなく、外気温の急激な変化が起こりやすいトイレなどでも同様の注意がなされ、予防法については、一般に次のような注意喚起がなされてきました。それを次に示します。
<冬の風呂場、トイレを快適にするアイデア>
1) 脱衣所やトイレを小型の暖房器(温風式)で暖める 2) 風呂場の床にスノコやマットを敷いておく 3) シャワーでお湯をためることによって、浴室全体を暖めておく 4) すでに浴槽にお湯がたまっている場合は、入浴前にふたを開けておく 5) トイレは暖房便座を設置する |
けれども、これらの概念が根本から覆るような報告がこのほど発表されました。それは、入浴中の溺死の8割は、この「ヒートショック」というものではなく、「熱中症」によるものだという説です。もしもこの「熱中症」が主な原因であるとすると、長時間湯船につかることが一般化している我が国独特の入浴習慣から考えて、我が国が突出してこの事故が多くなっていることは納得できます。また、もしそうなると上記の予防方法は全く意味のない努力となってくるのかもしれません・・・。
まだ、十分にこの説を支持する資料がそろっているわけでもないですし、心がけておいて損はないですから、上記の注意喚起は一応心がける方がいいのではないでしょうか・・・?