山本新一郎会長
情報の質
前回の会長の時間では、「メディアは無責任」というお話をさせて戴きました。世論というのはメディアに大きく影響を受けるにもかかわらず、そのことに対する責任感が薄いのではないか?というのが私の見方です。年々急速にインターネットが浸透してきている現在においては、さまざまな“情報”が氾濫しており、全く信憑性がない“悪質な情報”も数多く入ってきます。そこで我々が是非とも身につけなくてはいけないことは、それぞれの“情報の質”を見抜くスキルではないかと思います。今回は、そんな中で明らかに“間違った情報”と思われる例を見つけたのでそれをご紹介いたします。
皆さんにお配りしているのは、ある写真週刊誌に掲載された記事ですが、ここに挙げられた医療用医薬品があたかも高齢者の事故との因果関係があるかのように報道されています。記事には、「高齢者による事故が年を追うごとに増えてきている」、というグラフと並べて「この医薬品の売り上げが年々増加している」、というグラフを並べて示しているだけです。この両者がよく似た曲線を描いているために相関性があるのではないか?ということで無理やり両者を結び付けようとしているのです。冷静に考えればこのような幼稚な理論は化けの皮がはがれ“悪質な情報”であることが判ります。つまり、提供された資料が、主張していることをしっかりと裏付ける資料になっているのかどうか?ということを冷静に見つめることによって情報の質の良否を見分けることができます。ただ一般的に、写真週刊誌のように流し読みをしてあまり真剣に中身を抑えようとするものではないものについては、そのような面倒くさいことを考えて読んでいないので、ついキャッチフレーズだけが頭に残ってしまいがちになります。週刊誌の類は、「売れてナンボ!」の世界ですから、このことをよく知ったうえでよりセンセーショナルなキャッチフレーズを書いて引き付けようとします。このような戦略に騙されないようにしてほしいと思います。
3年ほど前にちょっとしたブームを引き起こした週刊誌の特集がありました。お配りした最後のプリントにその雑誌の2016年6月11日号と同年7月9日号の表紙を載せています。そこにはそれぞれ「医者に出されても飲み続けてはいけない薬」、「医者に言われても断った方がいい『薬と手術』」というようなキャッチフレーズが書かれています。もちろんこれは世間を惑わす“よくない情報”ではありますが、厄介なことは、そのうち100に1つくらいは薬剤師の私からみて、納得できる部分があることです・・・。