山本新一郎 会長
「ポリファーマシーってなんですか?」
一般に、内服している薬は単独では副作用を認めなくても、2剤3剤と併用すると副作用の発生頻度は高くなってきます。その数が、5剤から6剤ぐらいからその副作用の発生率は急に増えます。ですから、国はこのエビデンスに基づいて薬の数を減らそうとしています。このように、多剤服用している状態を「ポリファーマシー」と呼んでいます。そもそも、この「ポリファーマシー」という言葉はそれほど古いものではなく、せいぜいここ3年から4年ほど前から急速に普及してきた言葉です。そのきっかけはこの平成27年12月に出たこの新聞記事ではないかと思います。高騰する医療費の削減に向けて、おしりに火がついている状態の国が打開策の1つとして打ち出してきたもので、国のプロパガンダとも言えます。
その「ポリファーマシー」の状態を改善していこうという動きは、今、薬剤師が中心となって起こっています。【図1】は、「日経DI」という全国の薬局に無料で送られてくる雑誌で、薬局薬剤師には最もよく読まれている雑誌の1つです。そこにこのように、大きくこの「ポリファーマシー」の特集記事が組まれるほどですから、いかに注目度が高いかわかるかと思います。しかし皆さん方からみれば、ちょっと不思議に思いませんか?・・・というのも、薬を売っているものが薬を真剣に減らそうとしているのです。つまりいままで5剤使っていた人が2剤になれば当然それだけ薬局の売り上げは減ります・・・。実際に今薬局の売り上げは年々減り続けていて、薬局自体も減少しています。いよいよ薬局もサバイバルの時代に入ったといわれています。
そういうことをしてまで、どうして今薬剤師は薬を減らそうとしているのでしょうか?薬剤師の本来の役割は、“薬を売る”のではなく、薬を通して“薬の安全性を提供する”のが目的です・・・!というのが真っ当な理由ではありますが・・・。実際のところ、「犬もおだてりゃきに登る」という諺がありますが、あまり高い木に登ったことがない薬剤師がちょっと国におだてられてスルスルと木に登ってしまっているのが本音のところかもしれません・・・。