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『 低侵襲手術の最前線』
−手術の傷はいずれなくなる?− |
岸和田徳洲会病院 外科医長
坂 本 一 喜 様 |
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手術とは辞書によると「外科の医師が治療のため、メスや器械を用いて患部を切開し、治療処置をほどこすこと。オペ。」と記されています。外科医はメスで切開するイメージがありますが、現実は変化してきています。
以前は、大きな皮膚切開で手術を行う拡大手術が主流でした。しかし多くの経験から切除するべきものと切除せずに残しても良いものの区別がつくようになり、臓器温存や機能温存が可能となりました。拡大手術から低侵襲手術へと流れが変化し、カメラを使った腹腔鏡(ふくくうきょう)手術も導入されるようになりました。腹腔鏡手術は腹部に3から5カ所の穴をあけて、カメラや道具を挿入し手術を行います。傷が小さいため術後の患者さんの痛みが少なく済むことが一番の利点です。例えば胆のう摘出術なら、3カ所の穴をあけて手術を行い術後3日目には退院することができます。通常の大きな切開をおこなえば1週間ぐらいはかかります。その腹腔鏡手術もさらに進化し、あける穴の数を少なくしたり、穴を一つにして手術をすることも可能となってきました。
こうして手術の傷は小さくなってきていますが、皮膚を切開することなく患部を切除する方法もあります。内視鏡下手術といわれ、早期胃がんを胃カメラで切除することができます。早期がんの中でも一部のものだけが対象となりますが、皮膚切開も不要で胃も大きく切り取らずに済ますことができ内視鏡的粘膜下剥離(ESD)と呼ばれています。
この技術を応用した新しい手術が試験的に始められています。胃カメラを胃から外に出し、胆のうを切除するというものです。全く新しい発想のこの手術は、いずれ普及すると思われます。
未来では医学の進歩により外科医が皮膚を切開して手術をするという機会はますます減ることでしょう。
(担当:仲本 剛会員)
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