|
平成19年の国民健康・栄養調査によると、糖尿病が強く疑われる人が約890万人と糖尿病の可能性がある人が約1,320万人で今、合わせて約2,210万人と捉えられ、平成14年の糖尿病実態調査に比し、約590万人の増加がみられる。今後、わが国の疾病対策においては、糖尿病の発症予防とその早期発見・適正治療による糖尿病合併症の発症・進展阻止が最も重要な課題のひとつであると言える。今回は糖尿病診療の最近の進歩として薬物療法の進歩を取り上げます。
1.経口薬療法の進歩
糖尿病の経口薬による薬物療法として、現在日本では5種類の製剤が使えます。1980年代までは、糖尿病の経口薬として使えるのはスルホニル尿素薬(SU薬)とビグアナイド薬(BG薬)だけでした。BG薬は当時フェンホルミンが乳酸アシドーシスという重篤な副作用を起こすことがあるということで、わが国においてはほとんど用いられていない状況で、SU薬のみが用いられていた時代でした。
しかし、1990年代に入ってから糖の分解を抑制するαグルコシダーゼ阻害薬(αGI薬)、それからPPARγのアゴニストであるインスリン抵抗性改善薬、それと速効型のインスリン分泌促進薬が次々と開発され、現在5種類の経口薬が用いられるようになり、病態に応じた治療が可能になってきています。さらに、新しく登場しつつある薬剤として、膵β細胞の増殖作用があり、β細胞のアポトーシスを抑制する可能性があるインクレチン製剤が大変期待されています。
2.インスリン療法の進歩
1921年インスリンの発見後、ウシ・ブタの動物インスリンの精製化を経て半合成ヒトインスリンの製造、1980年には遺伝子組換え技術によるヒトインスリンが生産された。製剤については非常に進歩して、今まで速効型、中間型、混合型、持続型という形だったものが、数年前に51個のアミノ酸からなるヒトインスリン分子の一部を改変した超速効型や持効型溶解インスリンアナログが出てきて、生理的なインスリン分泌をシュミレーションできる形となり、より厳格な血糖コントロールが可能となってきている。
|
|
|
|
|
|