岸和田東ロータリークラブ 国際ロータリークラブ第2640地区
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第1564回例会 8月22日(金)

  『 ニコニコリクエスト 』 寺田 美昭会員

 リクエスト曲 : 秋桜(コスモス)

 娘の結婚式に一番聞きたくない曲です。

  『私の生業』  大石 武徳会員

 私の職業は、金属熱処理業です。約150社以上の企業から製品をお預かりして、炉内で加熱し、色々な冷し方を施して、形を変えないで製品をユーザーの希望する性格、性質に変えて返却する仕事です。人間の性格、性質は、ちょっとやそっとでは変わりませんが、鋼は熱を加え、冷し方一つで希望する性格、性質にすることができます。手順、方法を違えずに、手を抜かず、行程を進めることが大切です。違えると割れや、歪み、硬さ不良とキッチリと結果に表れます。
 鋼はすべての工業の母体となすもので、その鋼に活を入れる技術が熱処理です。どんな生まれのいい鋼でも、熱処理という教育をうけなければモノになりません。人間に教育が大切なのと同じように、鋼にも熱処理が重要だという事で、私の企業は成り立っています。江戸時代の哲学者、三浦梅園は、「五金の内には、鉄を至宝とす。」とあり、金銀銅鉛鉄の中で鉄が最も貴重だといったそうです。
 本日は、日本刀の強さの秘密をご紹介したいと思います。
 日本刀の材料の玉鋼は、「たたら」炉で製鋼される。たたらは約1500年の歴史を持つが、近代製鉄に押されて、1923年(大正12年)に途絶えた。しかし1933年に軍刀用の「靖国たたら」として復活、これも敗戦とともに廃業、1977年に、日本刀用の和鉄が枯渇したために、日本美術刀剣保存会が「日刀保たたら」として復活させて、毎年1月から2月にかけて4回、「たたら」の操業が行われて、刀匠たちに分配されています。
 折れず、曲がらず、よく切れる日本刀は、鉄が持つ最良の性質を集約したものであり、現代のハイテクも及ばない面をもっていることが、美術刀剣保存協会の鈴木氏の研究でわかったそうですので、ご紹介します。
 江戸時代まで日本刀は、すべて「たたら」で生まれた和鉄(玉鋼もその一種)で造られていて、日本刀のすぐれた性質は、和鉄を使わないと実現できないそうで、第二次大戦中に、溶鉱炉で製造した洋鉄を材料に、軍刀用の日本刀を多数製造されたが、丈夫さや、切れ味などの点で大きく劣るということで、なぜこの差が生じるのか。和鉄と洋鉄の化学成分を調べると際立った差はなかったそうです。次に顕微鏡で刀身を観察したところ、和鉄で造られたものからは、微細な線状の介在物が見つかり、洋鉄のものは、球状の介在物があったそうです。
 治金学では、金属中の介在物としてA、B、Cの三種類の系統があり、和鉄で造った日本刀はA系介在物で、洋鉄で造った日本刀は、BC系介在物であった。
A系介在物は、二酸化ケイ素と酸化鉄の化合物(ファイヤライト)で粘性があり、折り曲げ鍛錬するときに加わる力で細長くなる。日本刀の製造での折り返し鍛錬では、赤く熱した半溶解状態の玉鋼を折り曲げては槌で打ち固める。この操作を15回行うと、三万二千百六十八枚の層を重ねた状態になり、A系介在物は各層間の鍛着に一役買いながら日本刀に複層素材としての強さを与えることになります。
 一方、酸化カルシウムやアルミナなどが主成分で粘性変形しないB系、C系の介在物は、折り返し鍛錬でも役にたたず、サビの原因になるだけだそうです。
 玉鋼中のA系介在物の二酸化ケイ素は、砂鉄が木炭の火熱で「たたら」の炉壁の粘土をたべながら(侵食)還元され、玉鋼などの和鉄の中に成長するのではないかといわれている。日本刀は炭素含有量が少なく軟らかい鉄(心鉄"しんがね")を、鍛え上げた硬い玉鋼(皮鉄"かわがね")の中に包み込んで成型される。マクロのレベルでは二重構造で、ミクロのレベルでは約三万三千層の超多層構造、なおかつ良質のA系介在物が含まれているので、外部からの衝撃を吸収することができ、折れることが少なく、すばらしい切れ味の、美しい日本刀が存在するのです。